がん治療の入院でえたもの①:ゆっくり生きる
手術で入院する日の朝、新幹線のホームにいた。いつもの通勤風景と同じなのに、とても切なかった。
17歳の次女が私に声をかけた。
「今日は『がんにさよなら』する第1歩」と。
確かに、そのとおり。
成長した次女の言葉、すごい。
いつのまにか、頼れる人。
私からするとついこの間、午前8時11分に誕生した赤ちゃんだったのにな。
入院した病院は、山の上。
がんになって、手術のあとからは時間がゆっくり、ゆったりになった気がしていた。
すると、いろんな自然の変化に気づけるようになった。
ある朝は鳥の声。
ん?(なにか聞こえる)
ほーほけ
ほーほけ
鶯がほーほけきょと鳴けず、かわいい声で猛練習。
しかし、退院する頃には
ホーホケキョッ!
と。
鶯さんも次女同様、成長していた
振り返ると、鳥の声に耳を傾けたことなんてなかった。
猛烈にがむしゃらな日々を過ごしていたなぁ。
がんになって、手術して、ゆっくり時の流れを感じるようになったら、鳥の声が聞こた。
少し前に白血病で闘病中の池江選手が『空が青い』と書いていたことを知り、ものすごく納得した。
ゆっくり生きていく術を知ると、いろんなものが見えてくるのかもしれない。